今の生活が生きづらいと感じてる人に観てほしい「セイント・フランシス」

人は皆、さまざまな方法で幸せに生きようとします。

しかし、その方法が間違っていたとしても、本人は気づけなかったりします。

あるいは、そのスタイルを崩せない。今さら他の生き方はできない。そして漠然と今の生き方に不安を覚えたりします。

この映画の主人公「ブリジット」は数多くの不安を抱える女性です。その不安とは、
「34歳独身」
「大学を中退し、レストランの給士として働く日々」
「弟は家庭を持ち、自分とは違う世界の住人となり疎遠に」
「中絶を機に体調が変化してしまったことへの不安」
「そして周囲の友人たちは、充実した人生を送っているかのように映る」

そんな彼女は(子守り)の短期仕事を得ます。

そこで出会う6歳の少女フランシス。その出会いが周囲に人々の生活に変化をもたらしていきます。

人生とはなかなか思うようにいかないものです。

しかし、どんな人生であってもそれ自体が素晴らしいということを教えてくれる映画です。

この映画の脚本は、主人公役のケリー・オサリヴァンが手がけています。女性が観れば勇気をもらえ、男性が観れば女性の悩みにやさしく寄り添えそうな作品でした。

「セイント・フランシス」公式ホームページ
https://www.hark3.com/frances/#modal

Contents

見どころ

この映画は序盤はゆるやかに展開していきます。そのため少々ムニャムニャしてしまいました。登場人物の置かれている状況や価値観をしっかりと描写するところから始まるからです。

しかし、ブリジットとフランシスの絆が生まれてからは、一気に映画の世界に引き込まれていきました。

そんな見どころをご紹介します。

①魅力的なキャラクターたち

タイトルだけ耳にすると「フランシスという純粋無垢な少女によって人びとの心が救われる」。そんな映画を想像してしまいます。

しかし、このフランシス。なかなかヤンチャなお子様です。

自分の我が通らないとヘソを曲げる。
周囲の大人が困るようなことをあえてやる。

そんなキャラが洗礼名を持つという矛盾。かなりキャラが際立っています。

面白い映画の要素の1つにキャラクターがあります。

キャラクターさえ突出していれば映画が成り立ってしまうこともあります。

例えば、ホラー映画「13日の金曜日」で有名なジェイソン。映画13日の金曜日を観たことがなくても「ジェイソン」の存在は知っているのではないでしょうか?あのキャラクターが出てくるだけで物語が動いていきます。

この映画はそんな突出したキャラクターはいませんが、「身近に感じられる」という点では素晴らしいキャラクターに溢れています。

「自己肯定感が低く、他人がキラキラして見える主人公」
「産後うつで、子供が泣くたびに追い詰められていく母親」
「家庭を築き上げてきた自負がありながら、自分の行動が家庭を壊していると悩む女性」

そんな登場人物たちに、自分の日常を重ねてしまいます。

そんな大人たちが、フランシスをきっかけに自分を取り戻していく。そんな様子に癒されてしまいました。

①自己肯定感を考えさせてくれる

これは映画のワンシーンですが、自己肯定感について考えさせられました。

前述しましたが、フランシスの母親は産後うつを患っています。

フランシスの弟が生まれたことを機に発症しました。我が子が泣くたびに全ての生活が中断してしまう。そして、夫(レズビアン夫婦のため夫とはいえ女性です)は自分に気をかけてくれずノイローゼ気味になってしまいます。

そんなフランシスの母親は敬虔なカトリック信者です。どれほど自分が追い詰められようとも病院へ行こうとはしません。ただ、ひたすらに神に祈りを捧げるのです。

そして自身の中に存在する神はこう語りかけるのです。「お前が悪い」と。

絶えず自身を責め続ける彼女は、自分の子供の泣く声すら自身を責める十字架となっていきます。

そんなときブリジットは彼女にやさしくこう語りかけます。

「私の母は、赤ん坊の私の頭を壁に打ちつける妄想をして気を紛らせていた」

その言葉でスッと心の荷が降りたのでした。彼女に必要だったのは「神」ではなく「話を聞いてくれる友人」だったのです。

そして完璧な母親であろうとすることをやめました。

かつては、自分の力で我が子をあやせないことを責めていました。それを他人に任せるようになりました。公園で酒を飲み花火を観る。母親としてだけ生きるのではなく、1人の女性としても生きれるようになったのです。

ついに彼女は自分自身を許せるようになりました。

②女性特有の悩みを描く

なかなか映画では描かれることがない「女性特有の悩み」。それがユーモアある描写で描かれています。

「生理」から始まり「中絶」、年齢の不安など。そして、寂しい気持ちにつけ込み近寄ってる男。

女性脚本家でしか描けないリアルがあります。しかし、目を覆いたくなるような描写はありません。なまなましい話には変わりませんが、綺麗な表現で統一されています。

わたしは女性の心理を100%理解することはできませんが、この映画を観ることで女性の悩みを少しですが理解することができた気がします。

また、この映画には「社会の固定概念から生まれる蔑視」というテーマが隠れているように見えます。

母親はこうあるべき
女性はこうあるべき
子育てとはこうあるべき
中絶は恥ずべきもの

そんな固定観念にわたしたちは息苦しさを感じることがあります。

固定概念など存在しない6歳のフランシスの言動に、周囲の大人たちはハッとなり自分を取り戻していきます。

③ハッピーエンドではないが幸せな気持ちに

最後まで主人公ブリジットを取り巻く環境は何も変わりません。

急にいい仕事が舞い込んできて、キラキラと輝くキャリアウーマンになることもありません。

素敵な彼氏ができて、ハッピーエンドということにもなりません。

当然、年齢も仕事も住居も最初から何も変わっていないのです。

ただ、変わったのはブリジットの中身。

フランシスと出会いが彼女の中身を変えてしまいました。そしてブリジットの目に映る世界は変わっていました。

人は心の持ちようで幸せにも不幸にもなれる。そんなことを教えてくれた映画です。

まとめ

この作品は、今の生活に何かしらの不安や不満を抱える人に是非見てほしい映画です。

そして、序盤は少し辛抱して観てください。

幸せは自分の中にある

完璧でなくてもいい

強く生きなくてもいい

必要なのはほんの少しの勇気。それだけで立派なこと

観終わった後に、優しい風が心を包み込んでくれる。そんな気持ちに浸らせてくれる映画です。

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