令和6年度「介護保険法改正の審議内容」を簡単に説明します

なかなか小難しいタイトルになってしまいました(笑)。しかし、これ以上の要約ができなかったのでこのまま行きます。そして先にお詫びをしておきます。今回の記事は非常に長いです。
簡単に説明すると「介護に関する制度の見直しを行う」ものです。3年に1回見直しが行われます。
具体的には介護認定を受けた方が受けられるサービス内容や自己負担するお金の割合。また、介護サービスを提供する施設や職員、ケアマネージャーといった方々の職場環境。こういった内容が現状の介護に合っているのか。また国家予算の配分として今の介護費は適正なのか。などが話し合われます。
この法改正。介護に関わる人もそうでない人も密接に関わってきます。
それは、現在ご両親の介護が発生している方は直接的に影響を受けやすいからです。
例えば
どのようなサービスを受けられるか
介護にかかる自己負担割合
各施設に入居できる条件
これらは介護環境に大きく影響を及ぼします。
また、現在介護が発生していない方。次のような理由で人ごとではありません。
例えば
介護はいつ誰に降り掛かってくるか分からない
高齢にならなくても特定疾病にかかったら介護サービスが受けられる
※40歳以降で脳血管疾病や末期癌などに診断された場合
毎月支払う介護保険料が増加する
以上の理由から、知らないよりかは知っておいた方が良い改正情報なのです。
わたしは両親を介護している状況であること、介護情報ブログを運営していることから、「令和6年度の介護保険法改正の説明会」に参加してきました。
その内容を専門用語をできるだけ排除して、わかりやすく大まかな内容だけをを説明してみます。
昨今、介護を取り巻く環境は年々厳しくなりつつあります。
理由は働き手の人口減。高齢者の増加。コロナ禍による介護就労者の休職。また介護施設の実質的休業など。
これからの介護がどうなっていくかをしっかり抑えて、いざという時に困らないよう準備していきましょう。
介護保険とは 厚生労働省
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/about.html
Contents
今回の見直し内容は
その前に、まず法改正の流れを説明します。
実は今年の3月からすでに審議は始められています。そして年末までには中身が決まり、その内容は翌年の通常国会に提出されます。そして可決されれば令和5年に成立する。といった流れです。
つまりは新しい介護保険の内容は今年中に決まるという事です。
では現在どんな審議がなされているか。そこを次から詳しく、そしてできるだけ分かりやすくお伝えします。
福祉用具の見直し

結論から言います。
福祉用具がレンタルから販売へ移行されようとしています。
福祉用具は多くの方が借りて使っていると思います。わたしの母も介護ベッド、手すり、車椅子など。直接肌が触れるもの以外はほとんどレンタルでした。
背景としてはここ数十年で、手すりなどの福祉用具にかかる費用が10倍にも膨れ上がりました。そのため「レンタルではなく販売に切り替えてはどうか?」という議論がなされています。
しかしこのレンタルと販売。それぞれにメリットとデメリットがあります。
メリット | デメリット | |
レンタル | 利用者は費用を安く抑えることができる | 国の負担が大きくなってしまう 他人が使ったものなので利用者の好みが分かれる |
販売 | 国の負担を減らすことができる 利用者は自分の好みの新品を使用できる | 利用者は入院や施設入居などで使う期間が短いと購入代金が無駄になってしまう |
そして販売への移行で最も懸念されていることは、利用者の経済的負担です。
年金生活者の負担をさらに上げることで、利用控えが起きるのではないかと考えられています。つまり本来は使用した方が良い福祉用具を使わない方が増えるのではないかということです。
そうすることで自宅内の避けられた転倒事故などが発生し、更なる介護へと発展するのではないかと懸念されています。
介護サービスの生産性向上
介護業界は非常にアナログな世界なのだそうです。
例えば多くのデータが紙ベース。そして対面での説明会や講習・報告会。これらを改善していこうという流れが起きています。
実際に両親のケアマネさんが面談するときは、紙に書き書きしていました。そして毎月実印をもらいに来ていました。施設側の講習もオンラインではなく対面式が主流だそうです。
それがこのコロナ禍で実質的にストップしているのだそうです。
介護施設には行政から「実施指導」というものが行われます。今後は「運営指導」というものに変わっていきます。内容は施設が健全に運営されているかをチェックするものです。
それがコロナ患者数が増えると中止。中止するから改善指導が行われない。改善すべき箇所が指摘されず改善されない。またオンライン化を進めるにも対面講習でやろうとするから講習が中止になり進まない。といった悪循環が生まれています。
ここまで聞くと「早くデータ化して、やり取りをオンライン化しろよ」という声が聞こえてきそうです。しかしそう簡単にはできない背景がありました。
まずは費用の問題です。
介護施設は小規模事業所が多いです。その8割が小規模と言われています。そして設備投資にはコストがかかります。小規模施設は収益構造上、利益が出にくいといった特徴があるそうです。施設側は設備投資するだけのお金がないのです。
そして国が行っている設備投資の支援制度。あまりに申請期間が短すぎたりと実質使えない制度になっているそうです。
そしてソフト面でも問題がありました。データ化してもソフトのメーカーが異なると連携できないのだそうです。
例えばAケアマネ事務所とB介護施設が同じソフトを使っていないと連携できないのです。
そして先ほどの施設が設備投資できないという問題が重なり、データ化オンライン化が進まないのだそうです。
また各様式も統一されておらず、さまざまな事務処理に多くの負担と時間がかかっているのです。

介護保険費用の見直し
ここ、かなりテコ入れが入ります。
介護に関するお金の話。実はずっと先送りされていました。
しかし今回、ついに財務省からチェックが入ります。

本来、介護保険を扱っているのは厚生労働省です。財務省は国のお金を管理するところです。なぜ財務省が乗り出してきたのか?それはあまりに介護費用が年々増加し続けているからです。
国の負担が大きくなりすぎているので、制度を見直しましょうという流れです。その流れから先ほどの「介護サービスの生産性向上」に繋がってきます。
では実際に何が行われるのか?次に挙げられるものがあります。
①介護施設の経営規模の大規模化・共同化
②利用者負担の見直し
それぞれ簡単に説明します。
①の介護施設の経営規模の大規模化・共同化についてです。これは「小規模同士が連携し合って規模を大きくしましょう」というものです。組合みたいなイメージです。なぜ必要なのか?主に2つの理由があります。
1つ目は十分な介護サービスを提供するためです。この数年はコロナの影響で多くの職員に陽性者が出ました。そして小規模施設の多くは実質休業状態となってしまいました。共同化により介護サービスの安定供給をするという目的があります。
2つ目は施設の利益確保です。介護施設は大規模ほど利益が出やすく小規模ほど利益が出ないそうです。理由は規模に関係なく運営には一定のコストがかかるからだそうです。そうすることで設備投資を行い生産性を上げたいという目的があります。
また介護サービスにおいては競争の原理が働いていないという指摘もありました。サービスの質が上がらないのだそうです。そして介護施設の財務状況の報告を義務化するという動きもあります。なんとも財務省らしいアプローチですね。
②の利用者負担の見直しについてです。原則2割負担にしようと審議されています。また介護施設の相部屋料金の見直し、自己負担限度額の見直しなども行われています。
少し話がそれますが高齢者の国民健康保険である「後期高齢者医療」。こちらは令和4年の10月から原則2割負担が始まります。そこに合わせた形となります。これは病院に行き窓口で支払うお金が単純に倍になるわけです。年金収入は増えませんが医療費は倍。かなり厳しいと言って良いでしょう。さらに介護にかかるお金も原則倍になる動きです。
導入目的としては決して高齢者を苦しめるためではありません。介護保険制度を持続していくためなのです。厳しいですが、この辺りは世の中の流れとして仕方がないかもしれません。
区分支給限度額 目黒区
https://www.city.meguro.tokyo.jp/kurashi/kaigo/kaigoriyoannai/kyufu/service/kubunsikyugendogaku.html
「介護保険の仕組み」みんなの介護さんHPより抜粋
https://www.minnanokaigo.com/guide/care-insurance/price/
まとめ
かなり長くなりましたがまとめるとこうなります。
①介護にかかる自己負担額は確実に増えていく
②介護施設も生産性とサービスの向上が求められていく
ここで抑えておきたいポイントがあります。
国の施策というものは全体最適です。
国や社会全体が最適になるように議論されます。特殊なケースの1個人を救済する制度は考えてくれません。特殊なケースに陥っている方は自ら調べ、使える福祉サービスを組み合わせて、きちんと使えるように申請しなくてはいけません。
働き手が減っているということは税収が減っています。高齢者が増えているということは支出が増えています。そのことから分かるように、保険料が年々増加し、病院や施設に行ったときの自己負担額が増える。これは避けられない流れに思えます。
仮に高齢者の福祉だけを充実させるとします。しかし世の中は高齢者の問題だけではありません。子育て、教育、国防、いろんなところに予算を割り振らねばなりません。わたし個人的には介護にかかる自己負担額は減ることはないと予想しています。
では介護のお先は真っ暗なのか?いいえ、決してそんなことはありません。
しっかりと準備すればしっかりと対応できます。
楽ではありませんが負担割合が倍になっても大丈夫です。「一定額までしか医療費や介護費を払わなくて良い制度」「一定額以上の医療費を支払ったらしっかりお金が返ってくる制度」「医療費が高額になったら支払った税金が返ってくる制度」いろんな制度があります。
それらの知識を身につけて申請すれば、介護はまだまだ何とできます。
そして、ご両親がご健在な方。介護状態にならないように支援していきましょう。親子関係が悪くないのであれば一緒に園芸などの趣味を持つ。たまに一緒に出かける。ご両親がまだまだ元気でいたいと思ってもらえるような接し方をすることで、医療費介護費をグッと少なくすることができます。
これからの季節、お子さんと一緒にイチゴを植え付けても良いかもしれません。春になったら一緒に収穫して自家製イチゴを堪能する。きっと可愛い孫の笑顔のために一生懸命手入れをしてくれると思います。
そして、私たち世代の年金制度。もうこれにだけ期待した老後設計はやめにしましょう。まずは老後まで見越した健康的な生活を送ること。健康は最大の投資と節約です。また60代、70代になっても現役でお金を生み出せる方法を今から考えるのも良いでしょう。更にはイデコなどの積立を活用してお金を増やすことも検討してみてください。
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