親の「扶養義務」はどこまで果たすべきか

親の介護をしている方は一度くらいこう思ったことはないでしょうか?

「親の介護 どこまでしなくてはいけないの?」

一口に介護と言っても状況は人によって様々です。ご両親に十分に蓄えがある方。子供に十分な収入があり経済的に親の面倒をみれる方。また親には蓄えが全く無い方。そして同時に複数の親を介護している方。

介護状況は実に様々です。かかる費用や労力も人によって大きく異なってきます。

例えば結婚しているひとりっ子夫婦がいるとします。その両親が4人とも一斉に介護が始まったとします。そして両家の親の蓄えは全く無かったとしましょう。

わたしの経験上、お年寄り1人を入院もしくは介護施設に入居させると、少なくとも月10万円はかかります。4人合わせると40万円の出費が子供夫婦にかかってくることになります。子供夫婦にも家庭があり生活があります。そんな大切な家庭を犠牲にしながら、無理にでも介護をしなくてはいけないのでしょうか?

結論から言います。

介護で自分の生活を犠牲にしなくて良いです。

今回は子供だけでなく自分の親にも発生する「扶養義務」というものを、法律的な切り口から説明したいと思います。

自分の親だから
長男だから
本家だから
周りがそう言っているから

こんな理由で扶養義務をとらえていませんか?

誤解がないように補足しておくと、今回の記事は「毒親を捨てましょう」といった内容ではありません。介護を誰がどこまでやるのかといった問題はとても大切です。そして「法律的にはどうなっているのか?」ということをしっかり理解しておくことが重要です。そこを軽く見てしまうと、介護をきっかけに兄弟同士で険悪になってしまうこともあります。最悪は親が亡くなってから相続争いに発展してしまう恐れがあります。

介護は適切に行うと、家族の仲や相互理解がより深り、親の晩年が素敵な時間になることもあります。誰かを犠牲にすることなく、正しく介護をやっていきましょう。

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扶養義務とは

扶養という言葉を調べると「自力で生活できない者の面倒をみ、養うこと」とあります。

そして民法877条には「扶養義務者」というものがあります。

その内容は
直系血族及び兄弟姉妹は互いに扶養する義務がある
と記載されています。

つまり自分の配偶者や子供だけでなく、自分の親や兄弟にも扶養義務はあるのです。

しかしこの扶養義務。実は2種類あります。
①生活保持義務
②生活扶助義務

①生活保持義務から説明します。これは自分と同等の水準の生活をできるようにする義務です。対象者は自分の配偶者や未成年の子供です。一般的に扶養義務として知られているのはこちらだと思います。

②生活扶助義務を説明します。「扶助」とは聞きなれない言葉ですが「経済的に助ける」ことです。その内容は、扶養義務者が通常通りの生活を送れることが前提で、余力の範囲内で扶養する義務です。

つまり自分の親や兄弟の扶養は自分の生活を犠牲にしてまでしなくてよいと民法にも明記されているのです。扶養義務があるから、同居して介護や看護しないといけないわけではないのです。

扶養義務は放棄できるのか

たまにこんな言葉を耳にします。

「親とは縁を切った」
「兄弟とは絶縁した」

この絶縁。わたしは以前からどの程度効力があるのか気になっていました。

結論から言います。親子・兄弟関係は法律的に「無し」にすることはできません。これは過去にどんな経緯があったとしてもです。

つまり法律的に親子・兄弟関係を無効にできない以上、この扶養義務も法律上は放棄できないのです。

そこで有効になってくるのが先ほどの「生活扶助義務」です。親兄弟との縁は切れませんが、自身の通常生活を犠牲にするような扶養義務も発生しないのです。

親から扶養が求められたら法律的にはどのような手順になるかも説明します。まずは当事者同士の話し合いになります。それでも答えが出ないときは家庭裁判所で協議となります。

しかしここで大切な補足があります。

経済的な支援が無いと生きていけない親を扶養しないとどうなるか?そうなると親は生活保護を受けざるを得なくなります。その生活保護。扶養義務の方が優先されるのです。生活保護の申請に行くと、扶養してもらえる親族がいないか確認されます。そしてその扶養義務者であるあなたに、行政から確認が来る場合があります。

決して扶養義務者の生活を壊してまで義務を果たすよう言われることはありませんが、十分な収入や資産があるにもかかわらず親の扶養義務を果たさないということは難しいでしょう。そのような背景としては、親族同士の扶養を促すことで社会保障費を削減することにあります。

余談ですが、お笑い芸人「次長課長の河本さん」が生活保護の不正受給で叩かれたことがありました。内容はご自身のお母様に生活保護を受給させていたというものです。これは不正受給として叩かれていたわけですが、実はそうではありません。生活保護を申請していた当時は、まだ河本さんは売れっ子芸人ではなく、親を経済的に支援できる状況ではありませんでした。年間で100万円程度の収入しか無く、不安定な芸人という職種も重なり生活保護受給に踏み切ったそうです。さらにお母様は病を患っていました。生活保護を受ければ医療費のほとんどは免除されます。これは適切な判断と対応だったように思います。

しかしその後、河本さんは売れっ子芸人の仲間入りを果たします。そして「数千万円の収入がありながら親に生活保護を受けさせるとはけしからん!不正受給だ!」となってしまったのです。河本さんは生活扶助義務が十分に果たせるようになってしまったのですね。

扶養すべき者の順序

介護において長男や同居している子供は、その負担が大きくなりやすいと思います。

実際にわたし自身や親戚間でもこのような会話が繰り広げられました。
「お前は長男だから」
「あなたは子供の頃に1番してもらってるから」
「今まで実家に住んでいて家賃がかかってないだろう」
「お前は家を建てるときに土地を買ってもらっているから」

もう、言い出したらキリがないとはこの事でした。

ここも法律的な視点から見てみましょう。

扶養義務に生まれた順番は関係ありません。扶養すべきものに順序というものは無いのです。なので長男だから、長女だからということは関係ないのです。

しかし「法的にこうだからこうしましょう!」というほど「誰が介護をするか?」「お金はどうするのか?」という話し合いは簡単ではありません。もう当事者では難しいと思ったら家庭裁判所に委ねてしまうのも良いと思います。

世間体的に「親の介護のことで家庭裁判所など」と思うかもしてません。しかしわたしは介護から始まり、没後は相続争いに発展した親兄弟の争いを見てきました。明らかに専門家に頼るべきでした。

在宅介護を直接した者。巨額の借金を背負ってしまった者。直径家族でないのに巻き込まれてしまった者。皆が不幸になりました。

今は長男が最も富を継承する時代ではありません。末っ子が成功を収め、収入的には1番余裕があるケースも存在します。長男が受け継ぐ予定の実家と土地は空き家になり、不動産価値がなくなるかもしれません。

現代にあった話し合い方が必要に思えます。

みんなの介護HPより

まとめ

今回は扶養義務について法律的な視点でお話しました。

1番伝えたかったことは「介護で自分の生活を犠牲にしないでください」ということです。

介護は正しい知識を持つことで、適切に福祉サービスが受けられるようになります。実は受けられるのに受けずに潰れていく人は大勢います。そしてその介護制度は刻々と変わっていきます。

今後も実体験で得た介護情報を共有していきます。

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