「成年後見人制度」が実際に始まった感想②
Contents
後見人と今後の打ち合わせをしてきました
「成年後見人制度使ってみた」シリーズの第2弾です。
前回の投稿から4ヶ月弱経ってしまいました。言い換えれば、それだけ父の周辺環境が落ち着いていたからです。
初めてご覧になる方向けに、わたしの父の状況を簡単にご説明します。
①父が鼠蹊(そけい)ヘルニア手術で入院
②入院中に認知症が発覚
③退院後に「息子に財産が乗っ取られた」と勘違い。暴れ出す
④精神病院に保護入院する
⑤父の口座が凍結され、成年後見人制度を始める
⑥不足する介護費を捻出するため、実家売却をすすめる
①〜③の期間は仕事どころではありませんでした。昼夜を問わず電話がかかってきては怒号の嵐。近所トラブルも絶えず、神経が休まらなかったことを思い出します。
現在は⑥のステージに入っており、今後長期にわたり必要となる介護費をどうしていくかが課題になっています。今は両親の衣食住の心配がなくなり、今後はそこに注力していく感じです。
現状では、母の介護施設利用料が不足しています。本人の年金では足りないのです。父のは若干の余剰があります。そこをどうしていくかを父の後見人の司法書士と話し合ってきました。
今回はその内容を共有していきます。
「後見人がついたら、家族にお金は回してもらえないんじゃないの?」という不安をお持ちの方。大丈夫です。両親の介護に必要なお金はきちんと回してもらえます。その辺りをしっかりご説明していきます。
「成年後見人はやわかり」 厚生労働省
https://guardianship.mhlw.go.jp/personal/
過去の記事
後見人との打ち合わせ内容
現状の課題
今、わたしの実家の介護における課題は「介護費用」です。
具体的にいうと、両親の年金収入を介護費が上回っています。いわゆる赤字状態です。
この状況、友人や親戚に相談すると、こんなアドバイスが返って来るかもしれません。「足りない分は子供が出すしかないよね」。
実際に行政やケアマネージャーに相談しとき、このようにに言われたことがあります。「みなさんそうしてますよ」。
果たして本当にそうなのでしょうか?
わたしの答えは「ノー」です。
これは薄情とか、無関心すぎるとか、そういった問題ではありません。冷静に考えてみましょう。両親の不足している介護費用を出し続けること。それは自身の老後資金を削り続けることを意味します。
つまり、今置かれている両親の「介護費用の不足問題」を、子の世代に引き継ぐ可能性があるのです。
それは避けねばなりません。わたしは介護費用は「原則自己完結」だと思っています。
自己完結できる範囲内の介護サービスを利用し、足りない分は公的支援を受けながら介護を継続していく。これが理想でしょう。
仮に、今無理をして不足分を出すとしましょう。例えば、頑張って毎月5万円の不足分を出す。私たちのライフスタイルは刻々と変化しています。急な支出が発生するかもしれません。そんな無理を5年、10年、20年と続けることができるでしょうか?
介護資金の枯渇は両親の生活の安全に影響します。そして自身の生活にも大きく影響します。
「両親を大切に思う気持ち」と「現実的なお金の問題」これは冷静に判断する必要があります。
前置きが長くなりましたので話を戻します。
打ち合わせ内容
そんな不足する母の施設利用料を、父の余剰分から回してもらうことにしました。これまでも、少しでも両親のお金が残るように、具体的にはこんなことをしてきました。
①空き家になっている実家の固定費の削減
②母の収支の確認
③その他の近況報告
①に関してですが、すでに電気水道ガスなどは解約しています。NHK受信料、固定電話、新聞。これらも解約しています。
残る大きな支出は「固定資産税」「火災・地震保険」「生命保険」です。今回はそれらにも着手しました。
まずは「固定資産税」「火災・地震保険」。こちらはもう実家を売却する以外になくす手段がありません。実家売却はこの半年間動いてきましたが、諸問題でいっこうに進んでいません。
一度、30万円で買い取るという話をいただきました。建物土地含めての価格です。この話はあまりにも安すぎるので見送ることにしました。数ヶ月でなくなってしまうからです。今は最低100万円を目指し頑張っています。しかし、売却には時間はかかると予想しています。
実家の売却で心強いのが後見人の存在です。後見人の方は司法書士で、仕事がら相続や土地に深く関わっています。つまり不動産の知り合いが多くいます。現在複数の不動産に、買い手がいないかを当たってもらっています。
次に「生命保険」。こちらは入院保険のみ残し解約することにしました。
理由は、今不足する介護費用を対処していかないといけないからです。
父の死亡時にお金を受け取ることはできなくなってしまいますが、月に掛け金が12,000円発生しています。つまり7年間を超えると受取額より、毎月の掛け金の方が上回ってしまうのです。
生命保険を解約することのメリット・デメリットを挙げるとこうなりました。
メリット | デメリット | |
解約する | 毎月の掛け金がなくなり支出が減る 不足する介護費問題の有効手段になる | 死亡時に保険金が受け取れない 無貯金である父の葬式代が自己負担になる 今まで貸したお金が回収できない |
解約しない | 死亡時に保険金が受け取れる | 毎月の支出が減らない 不足する介護費問題が解決しない 7年以上で掛け金が受取額を上回る |
今回の目的は、あくまで「不足する介護費用の解決」です。
生命保険を解約することで、葬儀費用など諸問題はあります。しかし、保険金は父が使えるものではありません。そして、解約しても両親の介護の質を下げることはありません。むしろ解約しないことでお金が足りず、介護の質を下げてしまう恐れがあります。
よって、父の生命保険は解約することにしました。入院保険のみ年齢的に入院リスクが高まっていくことを考慮し、継続することにしました。
これらの解約の諸手続きは、後見人の方が全て代行して行ってくれます。(正確には後見人しか解約できないのです)。
そして解約時に発生した解約返戻金。これを不足している母の施設費用として回してもらいました。これで数ヶ月はしのげます。その期間で実家売却に注力していきます。
ここで、「なぜ父のお金を母に回してもらえるのか」という仕組みを説明しておきます。
結論から言うと、両親は扶養関係にあるからです。形的には父が母を扶養している形になっています。そのため父の年金は本人のためだけでなく、母にも使える理由が立ちます。
もちろん、行き過ぎた趣味娯楽などには使えません。また母以外のために使うこともできません。
例えばわたしが「車が欲しい」「旅行に行きたい」。そんな目的のために父の年金を借用することはできないのです。
後見人との信頼構築は大切
②母の収支の確認、③その他の近況報告に関してです。これはかなり大事なポイントです。
法や制度の専門家である後見人。味方につけてこそ、決して敵に回すものではありません。そのため、嘘の報告はいけません。まずバレるでしょう。
そして、後見人がどのような補佐をしているかは家庭裁判所に報告されます。後見人には報告義務があるからです。
そのため、わたしは母の収支がわかるものや、通帳のコピーを定期的にお渡ししています。他には近況の報告をして、わたしの家族の身の回りがどのような状況にあるかを伝えています。つまり後見人がお仕事しやすいように配慮しています。
後見人が「このが家族は協力的で助かる」。こう思ってもらえるように行動しています。後見人が助かるということは、私たち家族も助けられることに繋がります。
まとめ、自分の考え
また長くなってしまいました。まとめていきます。
後見人がついても扶養者の生活費は回してもらえる
後見人との信頼は大切
介護費が不足している人は保険などの支出を見直そう
後見人がつくことで、さまざまな苦労から解放されます。だからといって「あとはよろしくー」みたいなスタンスは良くないと思っています。
そして「手や金は出さないが口は出す」これが最も良くないと思っています。しかし実際、そのような家族もいらっしゃると聞きます。
自分の手に余るようになり、目の敵のようにしていた親。後見人がついた途端に「父がかわいそう」「母が嫌がるならやめてくれ」。ありがちだそうです。
本当に両親に不利益があることは提言しないといけませんが、ある程度は後見人を信頼し任せ切ることも必要に感じました。後見人が気持ちよく仕事できる環境を作ることは、申立人のわたしの仕事だと思っています。
そして、直接会って話すことは大事です。物事が進みやすく、電話やメールでは通じにくい生の感情を伝えることができます。実際に直接会うことで、後見人との距離が深まっていくように感じました。
施設申し込みも然りで、直接伝えることで切迫した状況や必死さを伝えることができます。
コロナ禍で「できるだけ面談は控えるように」とされています。しかし、「ここぞ!」というときは、足を運ぶことをオススメします。
リンク集
「成年後見はやわかり」 厚生労働省
https://guardianship.mhlw.go.jp/personal/