「成年後見人制度」が合わない人

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認知症などで判断ができなくなった人に代わり、その判断から手続きまでしてくれる制度。

それが「成年後見人制度」です。

しかし、この制度。調べてみると悪い噂も出てきます。わたしは父にこの制度を使っていますが、今のところデメリットは感じていません。しかし「合う人」「合わない人」はいるようです。

では、どんな人が「合わない」のか?

結論から言うと「自分で親のお金を管理したい人」。これにつきます。

今回の記事を書くにあたり、社会福祉協議会にある「後見センター」に取材をしてきました。また家庭裁判所が開催する「成年後見人制度の説明会」にも参加してきました。その内容を踏まえて「悪い噂の真相」をお伝えしたいと思います。

悪い噂① 後見人の不正

調べていてよく目にするのは「後見人の不正」です。

それほど「後見人」は不正をするのでしょうか?

その答えですが、「不正の多くは家族がやっている」だそうです。
※社会福祉協議会のインタビューより

そもそも「後見人」は誰がやるかというと、家族、弁護士、司法書士、社会福祉士です。(それ以外のケースもありますが稀です)

誰がやるかは家庭裁判所が決定します。制度を受ける本人の状況を見て適切な人が選ばれます。

そして、少なからず専門家の不正もあります。その場合はニュースや新聞に取り上げられることになります。そのためインパクトは大きくなりますが、発生件数自体は「家族の不正」よりは少ないそうです。

そもそもどうやってバレるのか?

後見人は家庭裁判所に定期報告の義務があります。収支の状況、お金の流れなど。この報告義務は家族が後見人をやったとしても発生します。

その中で、私的な「使い込み」があればチェックされます。

最悪は「解任」「刑事的、民事的な罪に問われる」可能性もあります。

悪い噂② 後見人は何もしてくれない

これは後見人の役割を知らずにいると起きてしまうようです。

「何もしてくれない!」という声を具体的に挙げてみましょう。

母のいる実家に行ったら庭が荒れ放題。後見人は何をやっている!
体が不自由な父の代わりに、買い物にすら行ってくれない
亡くなった父の墓参りに母を連れて行ってくれない

これだけ見ると「後見人は何やってるんだ⁈」と言いたくなりますよね。

ここのポイントは「後見人の仕事」の理解です。

多くの方は「後見人」と「ヘルパーさん」を混同してしまっているそうです。

後見人の仕事は「身上保護」。

本人の意思や意向、希望を尊重しながら本人の生活環境を考えていくことが主な仕事になります。ポイントは本人です。申立者ではありません。

実際の介護や身の回りの世話をしてくれるのは「ヘルパーさん」です。そんな介護サービスが利用できるように申請をするのが「後見人」です。

しかし、中には責任範囲以上に面倒を見てくれる後見人もいらっしゃいます。それはあくまで善意、本来の仕事ではないのです。

私の父についている後見人の例です。元看護師の司法書士で人情家。いろんな所にまで介入してくれます。「母が服を欲しがりすぎて困っている」と愚痴っていたら、なんと私物の服を母の施設まで届けてくれました。

親のお金を自分で管理したい人は

すでに親の資産で運用していたり、相続税対策で少しずつ口座からお金を引き出していた人。また、親の合意のもとで借金返済に充てていた人。こういったケースは成年後見人制度のデメリットの方が大きくなります。

この制度を使うと、本人の資産はあくまで本人のためにしか使えなくなります。

「投資」「借金返済」「親族への譲渡」などはできなくなります。

自分で親のお金を管理するには、主なやり方が2つあります。

①事前に銀行の代理カードを作っておく
②任意後見人制度を利用する

それぞれ見ていきましょう。

①代理人カード

「お金がない馬」より

キャッシュカードは原則1人1枚です。しかし、代理人カードを作成すればもう1枚のカードを、もしもの備えとして家族に託すことができます。

親のお金を自分で管理したい人や、子供にお金を管理して欲しい人は、元気なうちに「代理人カード」を作っておくのが良いでしょう。

代理人カードを何枚まで作れるかは銀行によって異なります。手続きをするのは例外なく口座名義本人なので、判断ができなくなってしまうと作成自体が難しくなってしまいます。

「代理人指名手続」三井住友銀行
https://www.smbc.co.jp/kojin/otetsuduki/sonota/dairi/

補足ですが、親のお金は「好き勝手に使うと非常に危険」ということを付け加えておきます。

それは使い込みは「経済的虐待」として扱われる場合があるからです。高齢者虐待防止法が制定され、虐待の内容として「経済的虐待」が明記されるようになりました。

また親の資産を減らしていくこと自体が、介護において不利益しかない行為です。

わたしは両親が無貯金で倒れてしまったため、金銭面ではかなり苦労をしました。それは現在も続いています。高齢者のお金を削るとることは、命を削り取ることと同じなのです。


「高齢者虐待防止法」 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/boushi/index.html

③任意後見人制度

「学研ココファン」より

この制度は唯一、後見人を自分で選べる制度です。

諸事情があり「後見人はどうしても家族でなければいけない人」は任意後見人制度を活用しましょう。

任意後見人制度の詳細は別記事で取り扱いますが、メリット・デメリットだけ簡単に触れておきます。

メリットデメリット
後見人が選べるそこそこ費用かかる
後見人に取消し権がない
※取消権とは本人が行った法律行為を取り消すことができる権限です

まとめ

「成年後見人制度」はその制度自体は悪くないと思います。

しかし、その内容を理解しないまま利用すると、思わぬ落とし穴に陥るケースがあります。

取材や説明会で知ったのですが、申し立てる理由の多くは「銀行からのすすめ」だそうです。認知症が発覚すると口座が凍結されてしまうからです。

そして、相談所の職員が詳細を聞いていくと「申し立てない方が良いケース」もあるのだそうです。

この制度を利用しようと考えている時点で、何か困りごとがあるのかと思いますが、一度しっかり調べてから申立することをお勧めします。

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後見人制度 問い合わせ先

「成年後見はやわかり」 厚生労働省
https://guardianship.mhlw.go.jp/personal/

「相談窓口のご案内」 厚生労働省
https://guardianship.mhlw.go.jp/consultation/

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